漁業戦士 厳太夢 「厳太夢海峡に出漁(たつ)」1-3
零は戦いの興奮が冷めず、放心状態のまま船の中にいた。
外には何人もの人の声が聞こえる。
船の衝突音を聞きつけた町民が集まっているのだろう。
“グォォォォン!”
突然、大間漁協と書かれた一台の軽トラが人ごみを分けるようにして入ってきて急停車し、飛び降りるようにして男が二人降りる。
運転して来たほうは若く、漁協の制服を着ている。助手席の男は私服であるが、こちらは50代であろうか。
漁協の制服を着た若い方の男・・。
大間漁協の若き組合長“武来人”であった。
武来人が船に向かって咎めるように怒鳴る。
「船に誰が乗っている?」
この声に促されるように零が船室から出てくると、港にいた人たちは一同に驚きの声を上げた。
「子供が!? 子供がどうしてコレに乗っている!」
「子供じゃありませんよ!15歳です。安室零と言います。」
「何故キミが乗っている!!」
「夕べ港に来たら雑魚がこの船に向かってきたから、あわてて乗り込んだんです。僕が2艘の雑魚をつぶしたんです。」
「なに!」
更に武来人が聞こうとしたときであった。
「その子は私の息子だ。」
軽トラから降りたもう一人の男が始めて口を開いた。零の父の“定武”であった。